小説

砂落情緒【試し読み】

Jガーデン53新刊予定、砂落情緒(しゃらじょうちょ)の試し読みです。どうぞよろしくお願いします。A6(文庫サイズ)/80p完結済。砂落情緒第一話幾度も陰口を叩かれていることはわかっていた。青年、生方砂魚がこの屋敷で暮らすようになってしばらく…

呪禁と角隠し【試し読み】

文学フリマ東京35新刊予定【呪禁と角隠し】紙書籍版の試し読みです。内容は電子書籍+後日談の書き下ろし。完結済です。呪禁と神隠し海の見える高台の古い屋敷。和洋折衷建築の窓から濃紺の上等な着流し姿の青年がじっと何かを待っているかのように一心に庭…

百歌清明

雨水林檎(2022/03/25) 兄として全ての義務を終えたその日、僕は東京で三年勤めた場所を後にした。その三年間は文字通り身を削られて、今ではこの身体の力は無く。それでもこれからのことは考えずに耐えきれず突然仕事を辞めたその行為に、限界は…

からだをたいせつに

雨水林檎(2022/04/26)「神尾さんね、それ以上無理を重ねたら責任はもちませんよ?」 駅前のクリニックの飯村医師とはもう八年の付き合いになる。先代の主治医は彼の父親で、跡を継いだ彼とは年も近いからそれほど気を遣うこともない。彼の方もそ…

この薄寂しい世界の果てから

雨水林檎(2022/04/16)今から思い出せば何しろ僕の兄は忙しい人で、いつもただ彼の背中を見ていることしか出来なかった。嫌われたくないから、ただ邪魔にならないように見つめている。それを許してくれる間だけは、僕はここにいても良いと思ってい…